収益を上げる話
マーチャンダイジングを担当する商品部門の責任数字としては、まずは売上があげられます。 それに加えて商品の生産にも責任を持つ立場ゆえ商品原価にも責任があるでしょう。 また売れ行きによって消化を促進するための値引きの判断もあります。商品原価と値引きは最終的に粗利益に影響します。 売上と粗利益を大きくするだけなら在庫は多く持つに越したことはありません。 しかしそれが経営に悪影響を与えることは明白です。 明白なのですが、在庫過多の経営への悪影響がどれくらいなのか、については把握が曖昧で精神的なものだけである場合もあります。 これでは日々の業務で高収益を実現する仕組みとはいえません。 アメリカの小売業で一般的な方法としては、展開終了時に残った在庫についてはすぐアウトレット担当部署に移管してしまうのですが、その際に商品原価の一部を割引して渡します。 過剰在庫を外部の処分業者にディスカウントして販売するのと同じ考え方です。 その際の原価の割引分(Write Off)として把握します。 最終的に、商品担当(Merchantといいます)の責任数字は、売上から原価・値引きを引いた粗利益(Gross Margin)からさらにこの在庫処分のための割引額をひいた額=Merchant Marginとなります。 これが売上、原価、値引、在庫のすべての要素を加味したうえで会社に貢献できた利益額を表します。
新客を獲得し続けるための利益を出すための勇逸の方策は、既存客からの売上を喚起(Activation)することです。
そのための方法全般がいわゆるCRM(Customer Relationship Management)です。既存客からの売上の経費効率を上げるためには顧客データを取得して 個々の既存客に直接アクセスできることが大前提です。 CRMとはこのデータベースに基づくマーケティングといえます。 目的は、購買実績のある既存客に次の購買を促すためのコミュニケーションを発信することです。 それぞれの顧客のデータによっていかに最適なタイミングで最適な情報を送れるか、が獲得すべきノウハウになり、それを磨くことで同じコストに対してより大きな売上が作れるようになり、利益の源泉になるのです。
ではどんなデータをどういう風に活用するのがよいのか? まず不可欠なのが①デジタルコミュニケーションのためのアドレスそれと➁購買履歴(いつ何をどれだけ買ったか)です。 個人情報の提供を求めるのが難しくなる中、最低限①だけあれば(➁は許可なく入手できるので)CRMは可能です。 CRMを効率化するために知りたいことは、「次にいつ何を買うか」ですから、購買データさえあればある程度の精度は確保できます。 逆に言うと、それ以外のデータ、名前・年齢・住所・電話・性別・職業などのデモグラフィックデータは、顧客データ名寄せ(通常電話番号を使う)や平均的な顧客像を理解するためには役立ちますが、CRMにはどうしても不可欠というものではありません。逆に言うと、最初の購買履歴を見て次の購買を類推するパターンを見いだすことがCRMの基本ともいえます。
ではこの重要なCRMの効果測定のポイントは何か? ふたつあります。 ひとつはコミュニケーションの効率を測る「レスポンスレート」。 使えるメディア別に、送信に対してどれだけの購買があったかを測る指標です。 これが高いほど効率がいい。 同じメディアでも内容を変えて送り、どちらの内容の方がレスポンスが高かったかを測定し、つぎの内容の改善につなげていくという試み(ABテスト)を常に行うことも大切です。 こうしてCRMの精度を高めていきます。 しかし実際にはメッセージを受け取らなくても購買はするということも一定のレベルであるため、これもレスポンスには含まれてしまいます。 そのため、真の効果を測るためには、一定数の既存客(コントロールグループ)にはメッセージを送らず、全体のレスポンス率からその層のレスポンス率を引いたもの、すなわちコミュニケーションしたことによる増加(リフトアップ)部分を真の効果とします。 なお、もともと良く買う人たちほどリフトアップは少なそうに思えますが、実際は逆で、レスポンスの高い人たちほどリフトアップもまた高いというのが一般的です。
もうひとつの重要指標は「リテンションレート」です。 これは、年度ごとのパフォーマンスを見るもので、去年の購買者のうち今年も引き続き買ってくれてる人がどれだけいるか、を示します。 新客獲得のコストを回収し新たな資金を生み出すために必要な既存客の売上高は、実は1年分では足りません。 何年も買ってくれることで得られるLTV(Life TimeValue)で見ることが必要なのです。 だから、毎年できるだけ離脱を防ぎ長く買い続けてもらうような施策が欠かせません。 この成果を見るのがリテンションです。
この二つの指標を追いかけ、施策を磨くことで高めていくことが、高収益企業を作る土台になるのです。
ブランドとは何か? ブランドとはとても抽象的でわかりにくいイメージであり、簡単に言えば記号であるといわれたりします。 しかし先に述べたように、ブランドとはその企業や製品の持つ付加価値を分かりやすく伝える手段、いわばメッセンジャーです。 ではブランドはどうあるべきか?
まず大前提として、企業側が伝えたい付加価値をきちんと認識し設定することです。 ブームに乗っかり他社を追随しなんとなくできた製品群ではどんなにいい名前を付けてもそれが表す「価値」がない限りブランドとは言えません。 製品の中身(コストの内訳)は原材料と加工賃。 その過程でどんな価値をつけて他社と差別化し消費者の支持を得ることを目指したのか、これをはっきりさせておくことが大事なのです。 品質にだけはこだわり抜いた原材料と加工方法なのであれば、それを主張するメッセージとともにふさわしい表現方法とクリエイティブが必要で、そのメッセージを通じて受け手の消費者がその価値を理解する。 これがブランドを通じた付加価値の醸成です。 使ってみてわかる価値なら消費者レビューが大事だし、誰にその情報をリーチしたいのかによって使うメディアも変わってきますし、表現も変わります。 ただし一貫すべきはどんな価値を伝えたいか、というところで、これがぶれないブランド育成には不可欠です。 ラグジュアリーブランドはそのラグジュアリーさを付加価値としているのでそれを追求したメディアとクリエイテイブになっているわけで、違う付加価値を持つブランドではそれと同じでなく、当然違うメディアとクリエイテイブが必要になるのです。 同じなのはそのブランド価値を貫き通すこと。 これがブランドを育てます。
ではブランドを育てることがどう利益につながるのか? 一つは成熟した消費者に訴える付加価値を持つことで売上が上がる効果。 もう一つが付加価値が上がるほど高い価格をつけられ、また無理に値引きにコストを掛けなくても競合の中で売れるようになり高い粗利益が実現できること。 それゆえ、ブランド価値を上げるためにかけたコスト以上の効果を得ることができ、企業が成長するわけです。
消費者が成熟した今、みかけだけのカッコよさでは誰も価値を感じてくれません。 が一方でモノがあふれる今は付加価値こそが消費を決定する重要な要素になってきています。 品質、価格、デザイン、機能性、それ以外に産地や生産者保護を含めた企業姿勢までもが十四那付加価値として認識されてきています。 今まで以上にブランドとそれが表す「企業が社会に提供する付加価値」が大事な時代になっているのです。
マーケティングというと、何かクリエイテイブな人が作る特別な企画、のようなイメージがあるかもしれませんが、実際には、「誰に何をどうやって売るか」を決める、いわば企業の核となる「営業戦略」全般のことをさすものです。 また、この営業戦略を明確にして消費者にも伝わるようにするためには「ブランド」というメッセージが不可欠です。 すなわち、企業の営業戦略とは「ブランド・マーケティング戦略」ととらえることができます。
なお、ブランドとは何もラグジュアリーアイテムにしかないものではありません。 それと同じようにすべての企業、すべての製品には伝えるべき価値があるはずです。 それを消費者に分かりやすく伝えて購入につなげるための手段がブランドと考えるべきです。 価値をきちんと伝えられれば、無用な値引きなどをせずに、高い利益率を実現できるようになる、これがブランド・マーケティングの真価です。
営業戦略は、何をどれだけ売るかを決める「商品(マーチャンダイジング)戦略」、誰にどうやって伝えるかを決める「マーケティング(狭義の)戦略」、そしてどこでどうやって売るかという「販売戦略」の3つが柱になります。
この3つの戦略が別々に動くのではなく、ひとつの大きな営業の基本戦略に基づいてシンクロして動くことで大きな成果を生むことができます。 それぞれの部署が大きくなると独立性を持ち、独自の戦略をもって走りがちですが、毎年年度の予算と戦略を決める際には、そのおおもとになる営業の基本戦略を決めることがとても重要です。
この仕組みをきちんと機能させることで、最小のコストと労力で最大の効果を上げることができるようになっていくといえます。
会社の仕事の成果が一番はっきりわかるのは「営業利益率」です。
売上に対してどれくらいの儲けがある仕事なのか、を示した数字だからです。 いくら売上が伸びても、それが儲からない売上だとしたら、仕事をがんばった対価としての報酬は上がりません。 それでは仕事をやる意味がないということです。 まずこの意識を持つことが大切です。
ではどうやって営業利益を出すか? これは売上を増やすことと経費を減らすことの二つが基本です。 「いかにして最小の経費で最大の売上をつくるか」これが仕事の基本中の基本です。 では最小の経費とはどこが目安になるのか? これには各社でほぼ固有の粗利率をもとに考えます。 売上が立つと製品原価は必ず生じます、他の経費と違ってこれを避けることはできません。 なので、あらかじめ決まっている粗利益率の中から、どれだけの営業利益率を出すのかを決めれば、残りが諸経費をつかっていよい範囲になるということです。 粗利率が50%あるということは、その中から営業利益と諸経費をだすということになります。 営業利益率を10%にしたいならば、諸経費の合計は40%を超えてはいけない、この範囲内で設定して管理する、ということです。 おおまかには、粗利益の20%を営業利益として残し、のこりを諸経費に使うといったように使われます。 なので、粗利益水準によって営業利益率を水準も決まってくるのです。
粗利益水準が高い=製造から販売まで自社で行う業態の場合、目標とする営業利益率はグローバルでは15%、日本では10%がひとつの目安になり、これを達成すれば優良企業ということができます。 日本企業の水準は低いのにはいくつか要因があります。 ひとつは粗利益水準の低さ。 これはブランド価値の不足によるもので、価格を上げきれてないということです。 もうひとつは業務すべてのコストの高さ、これは生産性、効率性が十分ではないというか、そのことが仕事をやるうえであまり重視されていないという問題です。 よく言われるデジタル化の遅れもひとつのわかりやすい要因ではありますが、それ以上に、各部署ですべての仕事で時間当たりどれだけの売上・または利益を生み出しているか、がわからないことが一番の原因です。 自分の仕事が時間当たりに生産する付加価値、これが自分の会社への貢献度、というのが仕事をする基本の動機になるべきですが、それすらないことが多いのが問題です。 ますは意識改革、そしてその成果が可視化できる仕組み作り、これはふたつとも大きな課題と言えます。 しかしこれこそが高収益企業への基盤です。 それにより日本企業の生産性も大きく上がり、営業利益率も向上するはずです。
売上が減ると、営業利益を確保するためには経費を削減しなければなりません。
ここを躊躇なく進めることも高収益企業となるためには大事なところです。 削れない理由はいろいろありそれぞれ正しいのですが、それでも優先すべきは営業利益の確保、この姿勢を忘れてはいけません。 経費削減は必ずできること。 できるできないは単に決断だけの問題なのです。
ここでひとつ忘れてはいけないことがあります。 経費の中には、それにより売上お向上に直結する、いわば投資的な経費があります。 店舗人件費、広告費、店舗建築費です。 しかし経費を削減しなければならないとき、最も大きな金額を柔軟に削れるのもここなのです。 これら経費を削ることはブランドのパワーを削ることにもなります。 長期化すると、社員のマインドまで縮み志向になってしまいます。 よって、削減に躊躇すべきではないですが、削減の期間をできるだけ短くすることが最重要のポイントです。 すこしずつ長い間、よりも大きく一度に、というほうが短期でのリカバリーを可能にします。 そして収益を回復しなるべき早く成長軌道に戻すことを目指すことが大切です。