収益を上げる話
営業の現場にはいろいろな数字があります。 たとえシステム的に数字を集計していなくてもPOSデータがあったり、少なくとも出荷データはあるはずです。 それらを重視せず主観的な意思決定が優先される理由のひとつに、「数字を見ても現場はわからない」というのがあります。 確かに経験に基づく勘は貴重で、おおむね正しいと思います。 でもそれは過去のデータの記憶に基づくもの。 データでは現場はわからないという根拠にはなりません。 もしそうなら、集めるデータやその見方に問題があるわけで、そこを修正すればよいはずです。 そうすれば経験に頼る判断よりも正確に現場を把握できるのです。
もう一つ、主観的な意思決定は部下の思考力を奪います。 上の言うことだけを聞いていればよい、という仕事になるしかないからです。 そうなると、成長は年数の長さによる経験の蓄積と人脈だけになります。 今の時代、そんなに悠長に自身のキャリアプランを考える人はいません。 もっと成長を実感できるところに行ってしまうのは自然なことです。
データに基づく営業思考は貴重なノウハウとして蓄積されていきます。 客観的なデータを元に判断すればいいので、自分で意思決定をすることが可能になります。 これは大きな成長と同時にやりがいにつながります。
リーダーにとって最も大事な能力は何か? こう聞かれたとき、「人間力」というのはひとつの答えになるでしょう。
では人間力とは何か? 懐の深さ、思慮深さ、行いの正しさ、広い視野と見識、などいろんなことが合わさって、この人にならついていこうと思わせるような力、を思い浮かべるのではないでしょうか。
ならばリーダーを育成するには人間力を鍛えることが一番大事なこと、でしょうか? 残念ながら人間力というのはそう簡単に身につくものではありません。 それには長きにわたり多くの人生経験が必要です。 人に教えることを仕事として訓練していない社員がリーダーを育成しなければならない、しかもその地位についてすぐに発揮できるようなリーダーシップを身につけさせなければならない状況で、人間力を一から鍛えている余裕はありません。
リーダーには地位についてすぐにリーダーシップを発揮してもらわなければなりません。 だから仕事で必要なリーダーシップは業務知識と同じように業務として身に着けることができるものでないといけないのです。
人間力のあるリーダーが持つものは「人望」です。 たとえ業務を離れても人としての信頼は変わらず頼りにされていく、というものです。 しかし業務としてのリーダーシップを身につければ、仕事をする上での「信頼」は得ることはできます。 仕事上はそれで充分なのです。 リーダーとして果たすべき業務ができていれば、リーダーとして自信を持つべきです。 そして時間をかけて人間力をつけて、人望のあるリーダーを目指していくべきでしょう。
経営の対象はそれそれが新規と既存に分けられます。 商品なら新商品と既存の定番。 顧客なら新客と既存客。 店舗は新店と既存店など。
実はこれを分けて考えることはとても重要なのです。 なぜならそこに、「新規へ投資は既存からの利益から」という鉄則があるからです。
新規は企業の成長にとって欠かせないものですが、結果がどうなるかわからないリスクがあります。 大きな投資が必要なのにその費用効率は決して高くない。 そしてそれを賄う利益は常に既存のビジネスだけから生まれてくるということです。 このサイクルを正しく理解することで、高成長と高収益を同時に実現することが可能になるのです。
このサイクルがうまく使えていないケースが2通りあります。
ひとつは新規に比重を置きすぎて収益が上がらないパターン。 売上が成長期であるときに起こりがちです。 実務担当者から見ると、新規こそが仕事の成果であるように思えますから、どうしても新規を重要視しすぎる傾向があります。 たとえば新規商品。 新商品がなければ消費者は全く見向いてくれない、だから少しでも多く新商品を投入する。 しかし、現実には、どう転ぶかわからない新商品ばから増やすより、好結果が出たことが実証されている既存品の方が消費者が購入する可能性は高くなりますし、利益率も当然定番の方が高くなります。 新客に向けた広告には派手さやインパクトがありますが、費用対効果は大きく期待できませんし、それが主目的ではありません。 既存客に向けた緻密なコミュニケーションは少ない費用で大きな成果が上がることは明白です。 既存品、既存客は大きな投資の結果やっと得られた貴重な資産であることを再認識しましょう。
二つ目は、既存の収益性に執着しすぎて新規への投資が行えなくなるパターン。 こちらは成長が一段落したあとで起こりがちです。 新規へのコスト効率が次第に落ちてきて、予算も減ってくると、無難な既存に頼って保守的な運用になってしまうことがあります。 リスクのあるところに向かっていくというスピリットが徐々に薄れてくるので、危険な兆候です。
これらを避けるためにも、新規と既存の役割をよく理解して、正しくサイクルを回すことを心がけましょう。
小売店舗が果たすべき新たな役割、その二つ目は、商品を使う機会と場所の創出です。
世の中にはありとあらゆる物が売られていますが、買ってはみたものの使う機会がない、使う場所がない、というのは多々あります。 所有することに価値を見いだしているならそれでもいいのですが、今の成熟した社会ではただ持っているだけのために買い物をすることに価値は見いだしにくくなっています。 だから、物を売る企業の責任として、使う機会や場所を自ら作り出して提供しましょう、ということです。 モノ消費でなくコト消費、というのはもうずっと前から言われていますが、実現しているところはまだほとんどありません。
今は世界中から集められた様々な商品が売られていますが、それぞれの商材がもともと開発されて売られた場所とは必ずしも環境が同じとは限りません。 例えばアウトドア用品、もともと豊かな自然に囲まれ自然に親しむライフスタイルが根付いた土地でその土地のニーズを満たすものとして生まれた商材のはずです。 華やかな社交界で毎晩のように開かれるパーティーでの装いに必要なドレスやアクセサリー。 食材にしても年間消費量や料理のレパートリーなどその土地の状況とは大きく違います。 もともと洋装のように明治以降に西欧から入ったものは数多く、それゆえその背景となる使う場面とは別に物だけ先に入ってきた状態になっていることが多く見られます。 逆に従来の文化は和装のように機会自体がどんど失われていっっています。 どちらも使う機会が十分にあるとは言えない状態で物だけ売られ続けているのでは、需要に限界が来るのは当然です。 使い道や機会が持てるようにな場を提供すれば、物の価値が発揮できて市場も広がる可能性があることは明白です。 物を売る市場は物を使う市場を開拓することでしか広がらないのです。
すでに、アウトドア用品を買うとそれを使うキャンプ地を紹介してくれて予約もでき、現地でつき方の指導も受けられるという例はあります。 しかし例えばスポーツ用品は店舗で実施に使って試すことはほとんどできません。 しかしそもそも店内で試せないまま買うという方が本来はおかしいのです。 衣料品なら試着できないのと同じです。
そこからさらに進んでいくと、競技会の開催という、さらにチャンスのあるイベント市場の創出に行きつきます。 そうなると商品を購入するモティベーションが大いに高まり、また新たなビジネスチャンスが広がります。 特殊な商材でなくても食品やアパレルでもそのような企画はいくらでも考えられます。 もう一歩先までが小売業の役割だと認識するかどうか、が大事なところなのです。
売って終わりでなく、売ってからがこれからの小売業。 これには無限の可能性があります。
経営者から、あなたは何のために仕事をしているのか? こう聞かれたときにどう答えますか? 正解は「利益を出すため」です。 自分のキャリアのため、関係する人たちを幸せにするため、社会をよくするため、などいろいろな答えがあると思います。 しかしあくまでひとつの営利団体に過ぎない「会社」でそれらを実現するために必要なことは、とにかく利益を出すことなのです。 (もちろん不正をすることは論外ですが)
これをみんなが当たり前のこととしてわかっているということが大事です。 企業の基本なのですが、意外と抜けがちです。 実際には利益を目指すことは良くない事、というような感覚も広く存在しています。 利益だけを目指す中で社会的な問題に発展することは確かに数多くあります。 しかしそれは利益を目指すのが悪いわけでなく、それ以外に果たすべきことをしていなかった、ということが原因です。 利益を出す行為そのものに対して嫌悪感がありすぎることが、日本経済の低迷の原因のひとつだと言っても過言ではないでしょう。 明らかに学校教育の不足によるものです。 投資教育の必要性が議論されるようにはなりましたが、それは将来の社会保障財源の不足を補う目的からでてきたもので、国としての経済発展のための教育はいまだ全く行われていないといってもいいでしょう。
こんな状況だからこそ、会社ではまず最初に利益を出すことが最も重要なんだという認識を共有することを行っておくべきなのです。
日本企業の生産性の低さ、というのがよく話題になりますが、その真偽は別として、利益を志向することで生産性は上がります。 生産性が上がると利益が拡大します。 これは間違いない事実です。 生産性が低いのは利益を志向していないからです。
最近Z世代はタイムパフォーマンス重視と言われることがあります。 なんでも短縮して見聞きしてしまう、というような行為だけ見てなんでも表面的なものにしか興味を示さないといった多少否定的なとらえ方をされることもあるかと思います。 しかしこれはまさに生産性を重視していることにほかなりません。 同じ効用を得るのに、2時間かけるより1時間しかかからないほうが生産性が高い。 だから短い方を選ぶ、というごく自然で正しいことなのです。
言い換えれば、従来提供されているサービスがあまりにも生産性の低いものが多いということです。 長年決まっている「尺」という時間枠があるので、中身は同じでもその尺を満たすため間延びさせる、ということが漫然と行われてきたことに違和感を持って抵抗しているわけです。 であれば仕事も同じように考えて見直すべきでしょう。 その基本がまず利益志向で仕事をするということになるのです。
利益志向を根付かせるにはまず利益に関わる数字の開示が前提になります。 そして自分の業務がどれだけ会社の数字に貢献しているのかがわかる仕組みと、その結果が反映される評価の仕組みが必要です。 その中で自分の仕事がどのように利益につながるのか、常に意識をしたうえで業務にあたること。 これをすべての社員が互いに求めていくような環境を作ることです。 そういうと何かギスギスしたフ雰囲気になりそうですが、そうではありません。 利益につながらない無駄なことはしない、という合理的な仕事の仕方になって、生産性が上がるということです。 自分の結果だけ考えて協調性や思いやりをなくすというようなこととは全く違います。 経営者感覚をもって仕事をする、ということの第一歩が、社員の生産性を上げることです。
では具体的には何をすればよいのか?
生産性とは一人時間あたりの売上または利益です。 すごく単純に言うと時間当たりの仕事量です。 これを上げるためにはもちろん自動化、機械化などのDXは有効です。 しかしそれ以前に大事なことがあります。 それは、仕事の時間は誰のものかという認識です。 わかりにくい表現ですが、会社での時間は自分のものではなく雇用主である会社のものだということです。 基本的に報酬は時間に対して払われています。 決まった時間にこの業務を遂行するのでこの給与、という契約です。 業務の遂行を考えず、単に時間に対して給与が発生している、と認識していることが多いのではないでしょうか。 たとえば、自分が何かを3日間で仕上げるよういくらかの金額で頼んだとします。 それが3日たってもできず、それどころかあと1日かかりますので追加料金をいただきます、と言ってきたらどう思うでしょうか? 納期遅れの上に追加料金なんてとんでもない、代金は一切払えない、となってもおかしくないですね。 しかし自分の仕事になるとこれと同じことを行ってもなかなか気づきません。 自分のほかの仕事の都合でできなかったから、自分がまだ満足出来てないから、などの理由で時間がかかり、それに対して残業代をもらうことに全く抵抗がないのではないでしょうか。 この認識をまず改める必要があります。 時間は会社のもの、自分のものではない、という意識です。 時間は勝手に延ばせない、と思うことが、時間あたりの仕事量である生産性をあげる基本なのです。
そう考えると、まず仕事がスピード重視だということが理解できます。 細かいことにこだわって遅くなるより少しでも早く仕上げることには価値がある、とわかるからです。 ではスピードのために品質は犠牲にしていいのか、という問いがでてきますが、元来仕事とは相反する利益のどっちかを犠牲にするもの(それは単なる作業)ではなく、どちらも取るにはどうするか考えるものです。 決してどちらも犠牲にはしませんが、その中で優先順位はスピードにあると考えましょう。
業務改善もここから起こります。 昨年以上の結果を残すには、同じ時間でより多くの仕事をすること、すなわち、同じ仕事なら昨年より短い時間で行えるようにすればよいのです。 逆にこれがなければ処遇が上がる根拠もないとうことです。
会議の考え方も変わります。 会議にも生産性があります。 会議は参加者すべての時間を預かることになるので、その時間でどれだけの成果を参加者がもって帰れるか、を意識して取り組むことで会議自体の生産性が上がります。
DXは業務の生産性向上を進める方法として有効です。 しかし最も重要な使い道は、意思決定の生産性を高めることです。 企業の意思決定は特定の人にだけ情報が集中してそこで主観的な意思決定がされることがよくあります。 これは早いし首尾一貫している良さもありますが、個人依存を脱することが出来ず継続性や発展性がありません。 DXによってあらゆるデータをすべての人が同時に入手できれば、客観的な意思決定をせざるを得ず、社員の経営参加度と意識が上がり、継続的、発展的な仕組みとなります。
このように、極めて単純な話ですが、会社の利益を上げる=生産性を上げるための原点は、「利益を出すことが仕事」だと思うことなのです。
すべての社員がそう答えるという自信はありますか?