利益を出すための話
外資企業の方々と話すと、よく「日本企業にはマーケティングがない」という指摘を聞きます。 本来マーケティングとは営業利益を出すための施策全てを指しますが、日本でマーケティングと言えば狭い意味の広告宣伝を指すことの方が多いでしょう。 日本語では営業戦略がそれに近いのですが、営業と言うとこれまたB2Bの営業を想像しがちです。 このように用語自体があやふやなことからも本来のマーケティングへの意識が希薄だということががわかります。 このことが経営上は生産性や利益率の差になって表れているとも考えられます。
では具体的に何が足りないのか。 私の様々な外資企業との協業の経験から考えると、足りないのはブランド、データ、粗利益の3つが挙げられます。
ではどうすればよいか。 何かベンチマークとすべきものを探してみましょう。
ブランドについてはヨーロッパ特にフランス企業のブランド管理が挙げられます。 なぜならラグジュアリーブランドビジネスはフランスの基幹産業だからです。 アメリカはIT産業、日本やドイツは自動車、これら国の基幹産業は利益を出す術を極めています。 それが国益に直結するからです。
データについては無店舗販売今ではEコマース企業のデータベースマーケティングがベンチマークとなるでしょう。
粗利益については、アメリカの小売業で一般的に行われているマーチャントマージンの管理手法が優れています。
そしてこれらを統合して営業利益に至る一貫したプロセスを示すことで、マーケティング力は著しく向上するはずです。
40年来の経験から導いた「利益を出すために重要な24の数式」の出版が近づいてきました。
カタログ通販時代以来の校正、しかも200ページにわたる校正は、2か月に渡る気の遠くなるような作業でした。
そんな中、表紙の素晴らしいデザイン案が出てきたところで、現実感と期待感が一気に高まりました。
数式といっても内容は重要な数字を要素に分解し、各要素に対して適切な施策を打つ、という極めてシンプルな考え方。
結果が数字で検証できるので、誰がいつやっても同じように結果を高めることができる、それが一番の特長です。
あとは最終チェックを残すのみ!
企業の成長には売上ではなく利益が必要だ。 売上が上がらないと当然利益も上がらないが、売上はあくまで通過点。
売上ではなく、利益を上げる力が「稼ぐ力」になる。 なので稼ぐ力の指標として「営業利益率」が使われる。
生産性とは、時間あたりの利益「営業利益/時間」であるが、実務の中で直感的にわかりにくい。
なのでこれを分解して「営業利益/売上 X 売上/時間」すなわち、「営業利益率」と「時間当たりの売上高」に分けて考える。 そう、営業利益率を上げることと、時間当たりの売上を増やすことを両方やることなのだ。
営業利益率を意識すれば、売上だけを見ずに常に利益率を上げることを考える。 そうすれば自然と利益率の高いビジネスへのシフトが起こる。
売上を伸ばすだけでなく、そこにかかる時間を短くするという意識を持てば、いたずらに残業したり必要以上に精度を上げたりせずにスピードを上げる必要が出てくる。 そう、意思決定の速さが貴重なのもここから来ている。
生産性を上げる、という言葉だけでなく、実際の数字を挙げてどこをどうするという意識を持つことで初めて具体的な改革が生まれてくる。
能登の震災から一か月近くたつ。 まだライフラインも復旧していない状態だが、今後の復興には1兆円以上が必要とされている。 阪神淡路では約10兆円、東日本では15兆円が復興に使われたといわれている。
この金額は、あとからいろいろ集計するとこうだ、という感じで世の中にでていきてる。 当初計画での必要資金見積額とその根拠は妥当か。 途中段階での進捗チェックと計画の修正が必要か。 これらについて大きく報じられて議論にならないのは、世論が無関心だからに尽きる。 世の中が関心を寄せるのは発生当初の無残な姿や途方に暮れる人たちの映像。 その時の義援金やボランティア活動をやることで満足しやがて忘れてしまう。
しかし肝心な復興はそのあと始まるのだ。 そしてその費用はとてつもなく大きく、我々が働いた法人税と所得税によってしか捻出することはできない。 その意味で国民は長年にわたり税金の形で復興支援をしている。 しかしその使われ方に無関心では「被災地に心を寄せている」とはとてもいえないのではないか。 数字で検証することをクセにしないと、物事を情緒的で表面的なところしか見れなくなってしまう。
営業の現場にはいろいろな数字があります。 たとえシステム的に数字を集計していなくてもPOSデータがあったり、少なくとも出荷データはあるはずです。 それらを重視せず主観的な意思決定が優先される理由のひとつに、「数字を見ても現場はわからない」というのがあります。 確かに経験に基づく勘は貴重で、おおむね正しいと思います。 でもそれは過去のデータの記憶に基づくもの。 データでは現場はわからないという根拠にはなりません。 もしそうなら、集めるデータやその見方に問題があるわけで、そこを修正すればよいはずです。 そうすれば経験に頼る判断よりも正確に現場を把握できるのです。
もう一つ、主観的な意思決定は部下の思考力を奪います。 上の言うことだけを聞いていればよい、という仕事になるしかないからです。 そうなると、成長は年数の長さによる経験の蓄積と人脈だけになります。 今の時代、そんなに悠長に自身のキャリアプランを考える人はいません。 もっと成長を実感できるところに行ってしまうのは自然なことです。
データに基づく営業思考は貴重なノウハウとして蓄積されていきます。 客観的なデータを元に判断すればいいので、自分で意思決定をすることが可能になります。 これは大きな成長と同時にやりがいにつながります。