利益を出すための話
テレワークか、原則出社か、は今よく議論されます。
よく考えるとテレワークの導入とは、日本のサラリーマンにとって会社に
捧げていた通勤時間と労力を取り戻した、という画期的な出来事だったのです。
長時間の低賃金労働でもストもせず従っていたサラリーマンが、毎日2時間
自分のために使える時間を勝ち取った。
これは過去に例がないほどの労働環境をめぐる一大成果です。
だからこの権利を手放す理由などありません。
一方会社側は、出社回帰の理由としてコミュニケーションの不足や生産性の低下を挙げます。
すべて管理者側の視点です。
しかしこれらは工夫することで解決方法はいくらでも見つかりそうです。
前提として日本人は、誰も見てなくてもちゃんと仕事をやるという動機を強く持っています。
同調圧力などと言われ上司が帰るまで帰れない、などネガティブなところが強調されがち
ですが、ここが欧米と違う、素晴らしいところです。
せっかく勝ち取ったテレワークを手放してはいけません。
セブンアンドアイがコンビニ以外の事業を売却しました。
同社は2005年に持ち株会社として発足したのですが、当初からその持ち株会社を前面に出していた時点で危うさを感じていました。
当初は傘下にセブン、ヨーカ堂、デニーズの3社がありましたが、各社のTVCMや看板でもまず初めに持ち株会社のロゴが優先して出るようになったのです。
企業防衛の観点かも知れませんが、これは消費者にとっては何の意味もありあません。 株主がどこかによって店を選ぶことなどないからです。
このような姿勢の会社であれば、各社が独立して独自に成長を果たす、という原理は働かないことは容易に想像できます。
おそらく各社の業界を見るのではなくセブンを見習え、という社風になっていったことは想像に難くありません。
その後そごう西武、バーニーズなども傘下になりますが、何もできず結局売却されています。
各社はそれぞれそれなりに強いブランド力を持っていました。 それを無視して持ち株会社のブランドだけを重視した結果が今回の売却でしょう。
ブランドを育てるためには資金が要ります。 しかし資金の出し手が表に出てはブランドにプラスはありません。
例外はブランドが大きく信用を棄損した場合です。
不祥事で破綻したビッグモーターは伊藤忠商事の傘下に入ることを広めることで失った信用の回復には寄与することでしょう。
しかしそれ以外では株主はあくまでブランドを支える黒子でなくてはなりません。
生産性に関するニュース、ではありません。
NHKではワールドニュースで世界のニュースが見れ、ラジオではAFN(American Forces Radio)が毎時ニュースを流しています。
それらを見ていてわかる、日本のニュースとの決定的な差が3つあります。
一つ目はキャスターの数。 欧米は必ず一人です。 日本は2人から4人いることもあります。 (中国・韓国も2人)
これは単純に同じことを伝えるために2倍の人件費を使っているだけに思えます。
一人が話している間他方は黙って待っているので、皆で交代にしゃべる卒業式の贈る言葉、を思い浮かべてしまいます。
二つ目は、同じ時間内での情報量の多さです。 話が早いことに比べ、次の話題に行く、カメラが切り替わる、その間が日本は長いのです。
速いと聞き取れない人がいるといけない、ということかもしれません。
一番困る人に全体を合わせる、というのはほかの場面でもよく見られます。
弱者保護は正論ですが、それにより経済の効率化が劣っていくとすれば、そのバランスを重視することが必要でしょう。
三つ目は数字です。 何か事象が起こったとき、欧米メディアはその影響をすぐ数字で画面に出します。
数字が一番客観的に理解できるからです。 日本ではそれより感傷的な面を強調します。
それも大切なとこですが、それで終わって現実の把握と解決から逃げるということになると困ります。
MLBが毎日見れるので野球中継でもそれがわかります。
ホームランを打つと、MLBはすぐに打球速度、飛距離が出て、あらゆる角度からのリプレイが流れますが、
日本では打たれた投手の顔が長々とアップになったりバックスクリーンに入った点数が大写しになったりです。
MLBとNPBの年俸がヒトケタ違ってしまったのも、ひとつにはこのような意識の差が積み重なった結果だともいえるでしょう。
つくずく店舗とDXは相性が悪いな、と感じることが多いです。
いわゆるデジタル化施策には大きく分けて4種類あります。
① 物流・会計等業務の効率化。 やるなら製販卸全体での商品情報一体化、RFIDの標準化までやるべきだがまだまだ中途半端。
② 広告配信内容の最適化。 センサーを使ってブッグデータを解析しという初期投資に値するほどの効果が上がらない。
③ ポイント付加、クーポン配布、アプリ登録、キャッシュレス対応。 会計にかえって時間と手間がかかる結果に。
④ その他、スマホでQRを読み込んで注文、など、業務効率化にはなってもその分消費者側に負担をかけることにもなる策。
要するに、どれも企業側の都合だけで、消費者が買い物するのが楽しくなるように、という視点で投資されていません。
バーチャルの試着、バーチャルの肌診断、売らない店なども、せっかく実店舗に来ているメリットを消しているだけです。
これでは店舗に消費者を呼び戻すことはできません。
あくまで経営を改善するため経費を効率化する「守りの投資」に過ぎません。
必要なのは、消費者のための投資をすること。 それが売上を増やす「攻めの投資」なのです。
小売業の雄、というのは短期的には絶対的に見えても、長い目で見れば大きく変わります。
百貨店が売上規模と消費者からの期待という名実ともにトップだったのは80年代。
その後大店法の緩和により90年代にはGMS(ニチイ、ダイエー、西友、マイカル)が大型ショッピングモールを核にトップに立ちました。
現状はと言えば、コンビニ、ドラッグ、ホームセンターに加えユニクロ、ニトリのような大型専門店も含め様々な業態の大競争の時代です。
GMSの衰退の大きな原因は90年代の拡大路線での過剰投資にあります。
しかし営業面ではGMSたる食品以外のフロアの不振が大きな原因です。
1階に食品があり、2階に衣料品、3階に家電や生活用品という構成は、消費者にとって一か所で何でも揃うとても便利な業態です、
しかしそこがモールにある専門店に劣るなら、ただのお荷物になってしまいます。
食品と衣料品、家電、雑貨などは仕入先も違えば在庫回転率も違し売り方も違います。
同じような業態で最強と言われるWalmartを見てみると、各カテゴリーが他の単独店と比べても品揃えと価格でも圧倒的な競争力を持っているのです。
それぞれの分野で独立しても勝てるような仕組みを作れなかったことが、全体を衰退させた大きな原因でしょう。
経営不振により外部資本が入ると、そのような不採算部門は切り捨てることを余儀なくされます。
経営的には正しくても、地元の消費者にとっては一か所で何でもそろう便利さを捨てることであり、生活の質は下がります。 とても残念なことです。