利益を出すための話
小売業の雄、というのは短期的には絶対的に見えても、長い目で見れば大きく変わります。
百貨店が売上規模と消費者からの期待という名実ともにトップだったのは80年代。
その後大店法の緩和により90年代にはGMS(ニチイ、ダイエー、西友、マイカル)が大型ショッピングモールを核にトップに立ちました。
現状はと言えば、コンビニ、ドラッグ、ホームセンターに加えユニクロ、ニトリのような大型専門店も含め様々な業態の大競争の時代です。
GMSの衰退の大きな原因は90年代の拡大路線での過剰投資にあります。
しかし営業面ではGMSたる食品以外のフロアの不振が大きな原因です。
1階に食品があり、2階に衣料品、3階に家電や生活用品という構成は、消費者にとって一か所で何でも揃うとても便利な業態です、
しかしそこがモールにある専門店に劣るなら、ただのお荷物になってしまいます。
食品と衣料品、家電、雑貨などは仕入先も違えば在庫回転率も違し売り方も違います。
同じような業態で最強と言われるWalmartを見てみると、各カテゴリーが他の単独店と比べても品揃えと価格でも圧倒的な競争力を持っているのです。
それぞれの分野で独立しても勝てるような仕組みを作れなかったことが、全体を衰退させた大きな原因でしょう。
経営不振により外部資本が入ると、そのような不採算部門は切り捨てることを余儀なくされます。
経営的には正しくても、地元の消費者にとっては一か所で何でもそろう便利さを捨てることであり、生活の質は下がります。 とても残念なことです。
ここ10年、都心部の再開発ではその規模の大きさに反して以前のように消費者が殺到するということがなくりました。
その大きな理由は商業部分が魅力に欠けるからです。最近の開発は商業施設を作るのではなく、高層階のオフィスや住宅、ホテルが主体。
土地に加え当然建築費も跳ね上がります。 これが低層階の商業部分の賃料を高騰させるのです。
それでは今伸びている妥当な価格のテナントでは採算が合わず、ラグジュアリーブランド頼みになります。
ただラグジュアリーブランドの店舗数は限られるので、多くの商業施設はそれ以外のテナントを求めて迷走することになります。
若者向けの店、体験型の店と言っても成功例はニンテンドーやポケモンセンターなどに限られ、一時流行った「売らない店」というのも成功しているとは言えません。
このような現象はすでに海外では10年近く前に起こっており、マンハッタンでは小売店やレストランが消え、大手メーカーのショールームだらけになりました。
では消費は限界なのか。 郊外に目を転じると、イオンモールやホームセンターが超大規模な店舗でワンストップショッピングを実現しています。
圧倒的なテナント数に映画やアミューズメントはじめクリニックや習い事まで取り揃えた、いわば現代の消費の集大成のような場所になっています。
その姿は50年前の黄金時代の百貨店を彷彿とさせます。 これにアウトレットモールも加わり、日本の商業施設の上位は全て郊外に移ってしまったといえます。
今や都心部は消費の過疎地になってしまったのです。 しかし都心部の消費者はそのような巨大施設の存在すら知りません。
この膨大な数の都心部隠れ買い物難民を救うには、商業部分の賃料を引き下げるしかありません。
住宅の高騰ばかり騒がれますが、現在住んでいる人にはこちらの方が切迫した問題です。
中間層が日々の買い物ができる街を取り戻すこと、これが求まられています。
ブランドは特殊な企業しかできないこと。 そう思っていませんか?
実はブランドは売上に必要な基礎であり、またどんな企業でも持っているのです。
モノが不足している時代にはとにかく調達できることが最優先。
次に選択肢ができてきたら、安さが選択のポイントになります。
さらに進化すると今度は価格に加えて品質の高さで比較します。
そしてモノが余る現在では何かそれ以上の価値が求められます。
それがブランドです。
すでにブランドが商品選択の最重要ポイントになっているのです。
ではブランドとは何か? という本質的なことろをお話ししましょう。
ブランドの本質とは、「創業者の持つ世界観」です。
成功したブランドには必ず創業者の「この価値を消費者に届けたい」という
生涯を掛けた情熱があります。
その世界観に消費者が共感したとき、「価値」が「ブランド」になるのです。
このブランド持つ世界観が商品に特別な価値を与えます。
そして共感した消費者とは強い感情的な絆=ブランド・ロイヤルティが生まれます。
こうなると流行なんかには左右されない強さを持てます。
あなたの会社で「この価値を消費者に届けたいという情熱」は何でしょう?
それをはっきり決めることがブランドを創ることになるのです。
野菜売り場で生産者の情報があると安心して買ってしまう、これがブランドの力です。
この価値が大きい程、高い値付けが可能になります。
ブランドはこうして創るものです。