収益を上げる話
会社の仕事の成果が一番はっきりわかるのは「営業利益率」です。
売上に対してどれくらいの儲けがある仕事なのか、を示した数字だからです。 いくら売上が伸びても、それが儲からない売上だとしたら、仕事をがんばった対価としての報酬は上がりません。 それでは仕事をやる意味がないということです。 まずこの意識を持つことが大切です。
ではどうやって営業利益を出すか? これは売上を増やすことと経費を減らすことの二つが基本です。 「いかにして最小の経費で最大の売上をつくるか」これが仕事の基本中の基本です。 では最小の経費とはどこが目安になるのか? これには各社でほぼ固有の粗利率をもとに考えます。 売上が立つと製品原価は必ず生じます、他の経費と違ってこれを避けることはできません。 なので、あらかじめ決まっている粗利益率の中から、どれだけの営業利益率を出すのかを決めれば、残りが諸経費をつかっていよい範囲になるということです。 粗利率が50%あるということは、その中から営業利益と諸経費をだすということになります。 営業利益率を10%にしたいならば、諸経費の合計は40%を超えてはいけない、この範囲内で設定して管理する、ということです。 おおまかには、粗利益の20%を営業利益として残し、のこりを諸経費に使うといったように使われます。 なので、粗利益水準によって営業利益率を水準も決まってくるのです。
粗利益水準が高い=製造から販売まで自社で行う業態の場合、目標とする営業利益率はグローバルでは15%、日本では10%がひとつの目安になり、これを達成すれば優良企業ということができます。 日本企業の水準は低いのにはいくつか要因があります。 ひとつは粗利益水準の低さ。 これはブランド価値の不足によるもので、価格を上げきれてないということです。 もうひとつは業務すべてのコストの高さ、これは生産性、効率性が十分ではないというか、そのことが仕事をやるうえであまり重視されていないという問題です。 よく言われるデジタル化の遅れもひとつのわかりやすい要因ではありますが、それ以上に、各部署ですべての仕事で時間当たりどれだけの売上・または利益を生み出しているか、がわからないことが一番の原因です。 自分の仕事が時間当たりに生産する付加価値、これが自分の会社への貢献度、というのが仕事をする基本の動機になるべきですが、それすらないことが多いのが問題です。 ますは意識改革、そしてその成果が可視化できる仕組み作り、これはふたつとも大きな課題と言えます。 しかしこれこそが高収益企業への基盤です。 それにより日本企業の生産性も大きく上がり、営業利益率も向上するはずです。
売上が減ると、営業利益を確保するためには経費を削減しなければなりません。
ここを躊躇なく進めることも高収益企業となるためには大事なところです。 削れない理由はいろいろありそれぞれ正しいのですが、それでも優先すべきは営業利益の確保、この姿勢を忘れてはいけません。 経費削減は必ずできること。 できるできないは単に決断だけの問題なのです。
ここでひとつ忘れてはいけないことがあります。 経費の中には、それにより売上お向上に直結する、いわば投資的な経費があります。 店舗人件費、広告費、店舗建築費です。 しかし経費を削減しなければならないとき、最も大きな金額を柔軟に削れるのもここなのです。 これら経費を削ることはブランドのパワーを削ることにもなります。 長期化すると、社員のマインドまで縮み志向になってしまいます。 よって、削減に躊躇すべきではないですが、削減の期間をできるだけ短くすることが最重要のポイントです。 すこしずつ長い間、よりも大きく一度に、というほうが短期でのリカバリーを可能にします。 そして収益を回復しなるべき早く成長軌道に戻すことを目指すことが大切です。
売上総利益=粗利益の話です。
粗利益は売上から製品原価を引いたものですが、この製品原価というのは同じ製品であってもその企業の業態によって大きく異なります。 生産者から商品(NB)を仕入れて販売するだけだと仕入れる製品の原価は高く=粗利益は少なく、自ら生産し(PB)販売する場合は粗利益は高くなります。 生産・流通・在庫などに対するリスク=コストを内製化すればするほどリスク=コストは高まるが対価である粗利益は高くなるというメカニズムです。 なので、どこまでリスクを取る業態なのかによって、基本的な粗利益の対売上比率(粗利率)はおおよそ決まってきます。 自らのブランド製品を自社工場で生産し、倉庫で保管し、自社の直営店に輸送して販売する、自社ですべての段階のリスクを持つなら粗利益は高くないとそれぞれの経費を吸収できません。 一方で他社が生産した商品を自社の店舗で販売するだけならば粗利率は全社に比べて低くなります。 ここが大事なところで、原価というのは避けられない経費ですが自社の業態によって粗利率はあらかじめ規定されるので、その企業が利益を出すためにはその他の経費率は自社の粗利率以下に抑えなければならないということです。
したがって、粗利益率の高低により目標の営業利益率も左右されます。 リスクの高いビジネス=高い粗利の事業は最終的に営業利益の水準も高くなります。 製品を仕入れる百貨店、量販店、コンビニなどの業態はでは粗利率は低く、絶対的な営業利益率水準も 自社ブランドの専門店に比べれば低くなります。
どんな業態でも、営業利益を出すために考える第一歩がその業態においての粗利率水準の中でいかに高くできるか、また計画した粗利率をいかに下げすに維持できるか、ということになります。 粗利益が下がると、どこかの経費を削減しないと取り返すことができません。 粗利益はどうしても確保すべき最初の砦といえます。 売上が減ると経費を削減しないと計画通りの利益はでません。 これは正しくは、売上が減ると粗利益が減るので、経費を削減しないと計画通りの利益はでない、と考えるべきです。
しかしここで注意すべきところは、粗利益が減る理由は、売上が減る以外にたくさんあるということです。 粗利益という、いわば利益の源泉を痛める原因には、次のようなものがあります。
①割引: 販促による実質値下げです。 ポイント付与、セット割引、キャンペーンでの割引、および購入特典商品(GWP)なども、マーケティング経費ではなく貴重な粗利益を削る費用項目になります。
②値引: セール時に行う売価の下げです。 これも集客になるからと事前に計画に値引き販売を組み込むことが多いですが、安易に粗利益を削ることが粗利率を落とし営業利益率を落とすことに直結することを理解しておきましょう。
③在庫処分損: 一方で製品原価には在庫処分にかかわる費用も含まれます。 どんなに売上を上げ、値引きをせずに粗利率を確保しても、余剰在庫を出してはその処分に関わる費用が最終的に粗利益を下げることになります。 値引きも含めて、このメカニズムを理解して判断していくことが大切です。 要は仕入れの精度を上げて余剰在庫を作らないことが、最終的に粗利益額と粗利益率の向上にとても重要だということです。
③品切れ: 品切れによる機会損失。 これは実店舗ではなかなか認識されにくいですが、本来在庫があれば売上になったはずの潜在ニーズがどれだけあったか、ということです。 たとえば在庫切れ前のその製品の全体に占める売上割合を、品切れ後の総売上額にかけることで簡易的に判断する、とかこれを検証して品切れをなくすよう仕入精度を上げていく作業が必要です。
ラグジュアリーブランドの多くはブランドを大事にしてその価値を上げるということをしますが、これはすなわち値引きや割引をしなくても売れるという、高い粗利益を実現するということを目指しているのです。 これによってはじめて高い営業利益率が継続的に実現できるのです。
このように、粗利の維持向上には割引・値引の適切な制御と、精緻な仕入在庫管理が重要だということがわかります。 日々売上高だけに目を向けていると知らず知らずのうちに粗利益を削っているということにならないよう、業務の仕組みをつくることが大事なポイントです。 ここがいい加減だとあとのツケは諸経費の削減しかありません。 売上と同時に粗利益と在庫高を同時に管理する仕組みが必要です。